「自己破産は“人生の終わり”ではありません。むしろ“再スタート”の制度です」


「自己破産」と聞くと、多くの方が「人生が終わる」「戸籍に載る」「選挙権がなくなる」といった強い不安や誤解を抱いてしまいがちです。けれど、それは実態とは大きくかけ離れています。
自己破産とは、過重な借金に苦しむ人を、法律の力で“借金の重荷から解放”し、“人生を立て直すための再出発”を支援する制度です。

この記事では、法律事務所の視点から、自己破産という制度の本質と、誤解されがちなポイント、そして実際の流れについて、できるだけやさしく、そして誠実にご説明いたします。


自己破産とはどんな制度?

自己破産とは、借金の返済が事実上不可能になったとき、裁判所に申し立てることで、原則すべての借金の支払い義務を免除してもらう制度です。
この制度の目的は、本人の生活を立て直すことにあります。単に借金をチャラにする制度ではなく、裁判所による厳正な審査と手続きを経たうえで、更生の見込みがあると判断された人だけが、再出発の機会を得られる仕組みです。


自己破産は「逃げ」ではなく「制度の活用」

借金を返せないことに「甘え」や「無責任」といった視線が向けられることがあります。しかし、現実には、自己破産に至る方の多くは、自分のせいではない理由で生活が困窮しています。

たとえば──
・リストラや収入減でローンが払えなくなった
・家族の病気や介護によって支出が急増した
・長期にわたる物価上昇と実質賃金の低下で生活が破綻した
・コロナや震災などの外的要因で、事業が傾いた

つまり、「やむを得ない事情」で生活が崩れ、やがて借金を借金で埋めるという悪循環に陥ってしまう。
そこから抜け出すための“法的安全装置”こそが、自己破産という制度なのです。


自己破産で免除される借金・されない借金

自己破産では、ほとんどの借金が免除されますが、すべてというわけではありません。
【免責される借金の例】
・消費者金融やカードローン
・住宅ローンの残債(ただし家は処分対象)
・携帯電話の端末割賦
・家族や友人からの借金
・リボ払い、ショッピングローンなど

【免責されない代表例】
・税金(住民税・所得税など)
・国民健康保険料や年金保険料
・悪意で他人に損害を与えた場合の損害賠償金
・罰金、科料などの刑事罰

 ※こちらに記載されているのは、あくまで一部の例です。詳しくは専門家へご相談ください。

「自己破産すれば、何でも帳消しになる」という誤解は、ここでしっかり否定されるべきです。むしろ、免責の対象外となる支払いがあるからこそ、専門家への相談が重要なのです。


自己破産の主な流れ(ざっくり5ステップ)

  1. 法律事務所への相談・受任
     → 書類の収集、債権者への受任通知発送
  2. 申立書類の準備と提出
     → 家計簿、通帳、借入状況などを整理し、裁判所に提出
  3. 破産手続開始決定(通常or同時廃止)
     → 財産の有無に応じて、管財人が選任されることもある
  4. 債権者集会(あれば)・免責審尋
     →1回程度裁判所への出頭がある。裁判所によっては免責審尋の出頭がない場合もあります。
  5. 免責許可決定(借金帳消し)
     → 通常、申立から3〜6か月程度で決定が出る

裁判所で怒られたり、借金の理由を厳しく詰問されたり…というイメージを持たれる方もいますが、実際には落ち着いた環境で、淡々と手続きが進むのが通例です。


自己破産しても「できること」はたくさんあります

自己破産をしたからといって、人生が停止するわけではありません。
たとえば──

  • 戸籍や住民票には記載されません
  • 家族や会社に知らされることはありません
  • 選挙権もなくなりません
  • 一定期間クレジットカード等は作れませんが、生活自体は継続できます

資格制限がある職種(保険外交、警備員、宅建士、士業など)を除き、ほとんどの仕事には影響はありません。
破産手続が終われば、制限も解除され、通常の生活を送ることが可能です。


「自己破産の意義」

もし「自己破産」がなかったとしたら、
借金を返しきれない人は延々と追われ続け、
生活を立て直す機会も得られず、
社会的な損失も大きくなるでしょう。

逆に、破産制度があることで、
借金の清算 → 再出発 → 社会復帰 という健全なサイクルが生まれます。

これは単に「個人を救済する制度」ではなく、社会の安定を守るためのシステムでもあるのです。
制度は冷たく見えて、実はとても“人間的”なのです。


最後に

借金を抱えている方の多くが、「自己破産したらどうなるのか怖い」とおっしゃいます。
でも、本当に怖いのは、「知らないまま、手遅れになること」です。

自己破産は、正しい知識と正しい支援を受ければ、あなたの生活と心を守る最良の選択肢になることがあります。
どうか、ひとりで抱えず、まずは一歩、法律事務所にご相談ください。
きっと、新しい明日が見えてくるはずです。

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